ダヴィンチ Jr. Pro X+ の設定・調整等について

前の記事:3Dプリンタをダヴィンチ Jr Pro X+に買い替えた(^ν^)のでメモ - undoのブログ で設定項目のこととか書いてたけど長くなりそうだったので別記事にする。

本体の設定項目について

  • SETTINGS→AUTO-LEVEL

 プラットフォームの高低差を補正しながら印刷する機能。キャリブレーション結果が良好だとこの設定は自動でOFFになるが基本的にONにしておく方が良い。プラットフォームの端と端の僅かな誤差で精度が大きく変わってしまうのを防ぐことができ、印刷時間も5%くらいしか長くならない。

XYZ Printの設定項目について

  • 一般→エクストルーダ移動時に造形物の上に通過することを避ける

 このプリンタはプラットフォームの端から端に向かって印刷をしていくので基本的にはそういう事態は起きないが、複数のファイルや多数のオブジェクトが含まれるファイルをまとめて印刷したり複雑な中空構造や多量のサポート材が含まれる印刷を行う場合、同一レイヤー上の既に印刷が終了しているオブジェクト部分をエクストルーダが通過することがある。印刷済みの箇所は1レイヤーぶん高くなっているためエクストルーダと衝突することになり、プラットフォームからの剥離や傾きが発生して印刷が失敗したり最悪の場合はエクストルーダ破損もあり得る。この設定項目を有効にすることでエクストルーダは印刷オブジェクトの存在しない安全な範囲を動くようになるので事故が起きなくなり、そのかわり印刷時間は結構増えてしまう。

  • サポート→サポートを有効にする

 初期設定では仰角45度以下の構造が存在する場合にサポート材が形成される。完全に水平なブリッジ構造であっても大きさによってはサポ材なしでもうまく印刷できたりするので、この項目はオブジェクトによって適宜切り替え。精度を求める場合はハニカム構造で。

  • サポート→ラフトを有効にする

 オブジェクトを垂直方向にまるまるカバーする大きさの土台が作成される。テーブルや椅子のように脚が細く上体が広がっているオブジェクトや、サポート材を多く使用するオブジェクトに有効。この機種は2種類のラフトを使用することができるが、正直どちらのタイプのラフトもそれほど信頼できない。格子は網目状の細かいタイプのラフトで、そこそこ定着するが完成品の底と分離しにくい。グリッドはダンボールを横から見たような構造のラフトで、プラットフォームからは剥がしやすいがほとんど定着していないとも言えるほど弱い。ラフトの設定を追い込むよりはモデルの方向を変えたりして定着力を上げつつラフトなしで印刷したほうが成功率が若干高い。また、ラフトを有効にした場合、印刷速度→底部レイヤ速度の設定がラフト生成時に適用されてしまうため、本体オブジェクトの1層目は通常速度で印刷されてしまうという罠がある。底辺に円弧があるオブジェクトは大抵これで失敗する。

  • サポート→底辺を有効にする

 オブジェクト最底面を周囲に薄く伸ばした帽子のつばのようなもの。プラットフォームへの定着力を強めるほか反り防止にも効果がある。板や棒のような細長かったり薄いオブジェクトを印刷する場合に効果的。

Z OFFSET調整について

 以下はプリンタ性能テスト用のよくあるデータを底辺有効にして印刷したもの。

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底辺がお互いに接着されず紐状になってしまっている。これでは底辺の意味がない。またオブジェクト本体の底面も接着できておらず剥がれてしまっている
このようにプラットフォームへのフィラメント定着が失敗したりオブジェクト底面の粗さが目立つというような症状が出る場合、プラットフォームとノズルの距離が適正でない可能性が高いので以下の手順でZ OFFSET調整を行う。

手順

 まずキャリブレーションを行った後、INFO→LEVEL INFOで9点の高さを確認しておく。薄い紙を2,3枚重ね、ノギスで測って0.3~0.4mmにしたものを準備。
 UTILITIES→Z OFFSET機能を起動し、ヘッドがホームポジションに移動したらヘッドとプラットフォームを手で押して動かし、LEVEL INFOで最高位となっていた点に移動させる。
 プラットフォームとノズルの間に紙を差し込み、OFFSET数値を下げていく。紙が挟まれて微かに抵抗を感じるくらいまで下げたら終了。
 その後テスト印刷として厚さ3mmくらいの小さな板ポリゴンを底辺付きで印刷し、その結果によってZ OFFSETの値を0.1mmずつ加減、再度テスト印刷、を適正になるまで繰り返す。
○適正
底辺が接合され板状になる、かつオブジェクト底面から剥がしやすい
オブジェクト底面、その辺が接合され密接された板状になり、剥がれない
○高すぎる場合
底辺、オブジェクト底面、その辺などが接合されず紐状になる(前述の画像のような症状)
オブジェクト底面1~3層くらいまでの面積が狭くなり、垂直の壁が逆台形になる
○低すぎる場合
底辺の押し付けが強すぎてビロビロのひだが出て汚くなる
オブジェクト底面1~3層くらいまでを印刷する際にノズルが印刷済みオブジェクトに接触してゴリゴリとヤバめの音がする
オブジェクト底面1~3層くらいまでの面積が広くなり、垂直の壁が台形になる

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低すぎる例。底面はしっかり板状になっているが、底辺の押し付けが強すぎるため押し出されたフィラメントがビロビロに伸びてしまっている
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適正な例。底辺が綺麗に板状になっており、オブジェクト底面もしっかり接着されている
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底辺を除去したところ。ペリペリと簡単に除去できるが若干バリが残るので、仕上げにニッパややすりがけが必要

印刷温度によるプラットフォームの膨張

 この機種はヒートベッド搭載によりプラットフォームを90度まで加熱することが可能だが、その際に若干プラットフォームが膨張しZ軸方向のズレが生じる。PLA素材では問題なく印刷できたとしても、ABS素材の高温出力時ではプラットフォームとノズルの距離が近くなりすぎて適正に印刷できない(最悪の場合、ノズルとプラットフォームが接触して傷がつく)という事態になる。フィラメントを交換して出力温度設定が変わったら必ず上記のZ OFFSET調整を行って、底辺や底面の定着が問題なく行えていることを確認すること。